第12回 品質工学技術戦略研究発表大会(RQES2019A)

あらゆる分野に評価でイノベーションを -ITとの結合で進化する品質工学-

 第11回品質工学技術戦略研究発表大会は盛会のうちに終了しました。開催にご協力いただきました講演者、発表者の皆様に,そして参加者の皆様に感謝申し上げます。
 次回,第13回品質工学技術戦略研究発表大会(RQES2020A)は 2020年11月27日(金)の開催予定です。

開催概要

 第12回品質工学技術戦略研究発表大会(RQES2019A)を下記の通り開催します。ビジョン30で提案された「あらゆる分野に評価でイノベーションを」のテーマの沿って,以下2分野に焦点をあてました。宇宙航空分野では,品質工学のJAXA標準作成にみられるロバスト設計への期待,イプシロンロケットの自律診断と地震予測へのMTシステムの適用事例と今後の展開を,自動車分野では,新領域(MBD,AI)と品質工学との結合の現状と将来像を,参加者の皆さんとともに議論します。招待講演では,ホンダのエンジン開発における品質工学の活用方法と重要性について講演いただきます。会員の皆さんの積極的な参加と議論をお待ちしています。

テーマ あらゆる分野に評価でイノベーションを -ITとの結合で進化する品質工学-
日 時 2019年11月22日(金) 10:00-17:00(受付は9:30より開始予定)
場 所 星陵會舘ホール [地図](別ウィンドウで開きます)
東京都千代田区永田町2-16-2 TEL:03-3581-5650
参加費 品質工学会員 10,000円,非会員 20,000円(定員400名になり次第,締切ります。)
懇親会 星陵會舘内レストラン「シーボニア」(定員100名になり次第,締切ります。)
懇親会参加費 7,000円(懇親会のみの参加はできません。)
主 催 一般社団法人 品質工学会
 

プログラム

10:00 ~ 10:10 開会の言葉
谷本 勲(品質工学会会長)
10:10 ~ 10:50 基調講演
 品質工学の発展の経緯と今後の研究の方向性
浜田和孝(品質工学会副会長 兼 技術統括部長)
10:50 ~ 11:30 研究発表1
 品質工学のJAXA標準書設定の意義と宇宙航空産業における品質工学への期待
角 有司(JAXA(宇宙航空研究開発機構))
11:30 ~ 12:10 研究発表2
 AIの時代とMTシステム -ロケット自律診断と地震予測を例として-
手島昌一(アングルトライ(株))
12:10 ~ 13:30 昼休み
13:30 ~ 14:10 招待講演
 品質工学活用による開発効率向上 -バルブシート摩耗を例に-
高橋伸一((株)本田技術研究所)
14:10 ~ 14:50 研究発表3
 製品機能のロバスト最適化における品質工学とMBDの役割
沢田龍作(サワダ技研(株)) 
14:50 ~ 15:30 研究発表4
 日本の自動車産業の課題とMBD活用
武重伸秀(マツダ(株))
15:30 ~ 15:45 休憩
15:45 ~ 16:55 パネル討論「品質工学のITとの結合による進化と課題」
司会:山戸田武史((株)IDAJ)
パネリスト:各発表者
16:55 ~ 17:00 閉会の言葉
17:15 ~ 懇親会 (別途,参加申込みが必要です。)
 

第12回品質工学技術戦略研究発表大会 開催のご挨拶

一般社団法人   品質工学会代表理事・会長
  谷本  

 
 平成天皇が上皇になられ、令和天皇をお迎えし、令和時代が幕を開けました。まずは上皇さまへの御礼と新天皇様へお祝いを申し上げたいと思います。この度の令和への改元は譲位という形で行われましたので、明るく迎えることが出来ました。このまま明るい令和が続いて欲しいと思います。
 我々も令和最初の品質工学技術戦略研究発表大会を、皆さんのご協力を得て素晴らしいプログラムで開催いたします。明るい令和の幕開けに相応しい大会になりそうです。あとは参加の皆さんの積極的な議論が、さらなる成果を付け加えてくれます。
 さて、平成時代を振り返ってみますと、昨年の当大会の挨拶でもお話させて頂きましたが、平成終盤で大問題となった品質データ改竄問題が浮かびます。品質が日本産業の最大のブランドであるなかで、この問題が発生しました。「効率よく」というマネジメントプロセスを飛ばして、力ずくでブランドを守ろうとしたしわ寄せが現場に集中した結果と思っています。品質の作り込みと保証を効率的に達成することで技術者の自由を拡大する、というのが品質工学の目的の一つです。 それなのに我々品質工学が力を発揮できなかったことに心を痛めています。 皆さんと共にこれからも頑張っていきたいと思います。
 これからの技術展開は一言で「ロボット化」と言えます。機械と知能(認知技術)の結合です。車の自動運転が当面の話題です。システムとしての車はこれまでと比べ、けた違いに巨大化、複雑化していくであろうことが容易に想像できます。 この巨大化、複雑化に何の工夫もなく対応すれば、現場の負担は平成のデータ改竄問題どころではありません。いま一度品質工学の原点に立ち返り、ITを含めて再構築していく必要性を感じています。その思いが大会のテーマである「あらゆる分野に評価でイノベーションを」「ITとの結合で進化する品質工学」です。「進化しなければならない品質工学」かもしれません。今回お話頂ける自動車業界のMDBも、巨大化、複雑化への回答の一つだと思います。また JAXAのお話には巨大、複雑の究極であり、宇宙ロケットという一発勝負の緊張感に身の震える思いがしております。
 平成元年はベルリンの壁の崩壊に始まり世界構造変動の始まりの年でした。我々技術の世界も、この世界構造変動に巻き込まれていきました。しかし、日本はこれに気付かず、この年の大納会で東証株価は史上最高値を付けて、戦後日本の一番輝いた日だったのかもしれません。そして平成の終わりには品質データ改竄間題に至るのです。日本産業にとって平成はまさに失われた30年となったのです。これは「効率」を忘れた結果であることは先に述べました。招待講演の本田技研様がこの平成の大宿題に解を示してくれるものと思います。
 一日も早く平成の宿題を片付け、巨大化、複雑化の進む技術世界に的確な技術マネジメントの創出という令和の命題に力を注ぎたいと思います。今回の第12回品質工学技術戦略研究発表大会がそのスタートとなってくれると思います。皆さんの積極的な議論を期待しております。

発表概要

[基調講演]
 品質工学の発展の経緯と今後の研究の方向性

浜田和孝(品質工学会副会長 兼 技術統括部長)

 
 品質工学会は品質工学フォーラム発足から27年が経過、また田口玄一没後7年が経過した。筆者は学会20周年時点でそれまでの学会誌掲載論文を中心に品質工学の産業分野、技術領域について広がりの状況を整理した。公表される事例の限りでは分野、技術領域の広がりを確認できたが、個別の問題への対策、改善事例の積み上げが多いのが実態であった。言い換えれば、田口玄一の提示した手法を個々の直面する技術課題に適用し、手法や考え方の正当性を積み上げていく形で品質工学という一本の木が成長してきたとみることができる。
 一方、ここ10年を俯瞰すると、適用分野、技術領域の広がりよりも、田口の考え方や手法に対して、活用や応用の仕方が変化(進化や発展)してきている。例えば、技術開発の戦略として ①技術テーマの選択、②コンセプトやシステムの創造、③パラメータ設計のための評価、④様々なツールを用意する、という品質工学の4つの戦略に対して、③が品質工学の中心であることは変わらないが、①、②へのバーチャル評価の応用、QFDTRIZ、公理設計など他手法との融合が試みられている。また、④はIT(情報技術)の急速な進展により解析能力、情報処理能力がドラスティックに拡大し、シミュレーションで仮想試作することも容易になっており、MBD及び1DCAEとの融合とも相まって、③の内容に変化が出始めている。
 本講演では、この10年余りの社会的変化、技術的変化を踏まえ、適用内容の変化を概観するとともに、その内容を踏まえて、品質工学会および品質工学研究の今後の方向性について副会長としての考えを述べたい。


[研究発表1]
 品質工学のJAXA標準書設定の意義と宇宙航空産業における品質工学への期待

角 有司( JAXA(宇宙航空研究開発機構))

 
 JAXAでは、2005年より設計標準の制定を進めてきており、これまで82の文書を公開(http://sma.jaxa.jp/TechDoc/)し、ロケット・衛星開発業務に利用するとともに、英訳版の作成とISO化活動を進めてきた。今後は、標準化活動によるロケット・衛星の不具合撲滅活動を継続するとともに、新しいミッションの創造活動と、そのための技術研究活動が重要となる。
 JAXAでは新しい研究開発とロバスト性とを両立できる技術として品質工学に着目し、これまで研修活動や実際の製品開発への適用を進めており、ロケット・衛星分野で成果をあげている。今年度からは、品質工学のJAXA標準の作成に着手し、航空宇宙産業における品質工学に関する知見の共有と、技術導入の活性化を図りたいと考えている。
 大会当日は、それらの取り組みについて、皆様からのご意見を伺い、より良い活動とするための議論をお願いしたいと考える。


[研究発表2]
AIの時代とMTシステム    - ロケット自律診断と地震予測を例として -

手島昌一(アングルトライ㈱)
 

 
 人工知能(AI)は、膨大なデータに潜む規則性や傾向を見出す技術であり、その実施には機械学習による方法と統計数理を用いる方法とがある。後者の代表としてMTシステムがある。
  いずれの方法にも特質や課題があるが、設備や機器監視あるいは自然災害の予測には統計数理を用いることが多い。なぜなら異常時の原因診断が必要となるからである。ここでは、イプシロンロケットの自律診断と地震予測を例として、ホワイトボックスAIとしてのMTシステムの有効性を紹介する。
 田口玄一は「技術者は予測できなければならない」と述べていた。AIの進展により予測のコストは劇的に小さくなるので、これからの技術者はデータの山だけではなく、予測の山も使いこなすべき立場になる。そのような観点から、技術者には出来るがAIには決してできない課題についても議論したい。


[招待講演]
 品質工学活用による開発効率向上  - バルブシート摩耗を例に

高橋伸一((株)本田技研工業)

 

 
 ホンダのエンジン開発動向、ありたい開発の姿、保有技術と系統図、データ処理の歴史とレベル、排気バルブシート摩耗量予測モデルを用いたL3階層の達成実例。
 以上の内容を、実際にエンジン開発現場で行われているガソリンエンジンの排気バルブシート摩耗量予測モデルを例に、今後のエンジン開発における品質工学の活用方法と重要性を概念的に述べる。


[研究発表3]
 製品機能のロバスト最適化における品質工学とMBDの役割

沢田龍作(サワダ技研 (株))

 
 製品機能のロバスト最適化は社会と会社の利得を高い次元で両立させるものであると、考える。自動車OEMやサプライヤーにおいて、広義MBDの導入は必須のものとなっているが、その道具の比較や選択、そしてモデルの標準化と流通が最大の関心事となっており、戦略においてはロバスト最適化議論が置き去りにされ、戦術においては開発上流の製品企画・設計とサプライヤーも含めた構成部品の設計のプロセス間連携、橋渡しが機能していないように思う。部品開発目標があいまいであったり、市場動向の変化ではなく、製品評価の結果で変更されたりするのは、それが直接の原因であるが、連携と橋渡しを考慮したモデル構築やプロセスになっていないのが真因と考える。
 そこで、2019年38日にマツダで行われた企業交流会でのパネルディスカッションでパネラーの方々が述べられた事、627日の品質工学会発表大会での講演で述べさせて頂いた事を振り返り、再整理して、製品機能のロバスト最適化に向けて品質工学会が果たすべき役割と、MBDの戦略・戦術について、パネラー及び会場の皆様と本日議論するとともに、ここで終わるのではなく、製品機能のロバスト最適化を課題の一つとしている商品開発プロセス研究会に積極的に参加頂き、建設的な議論をしたい。


[研究発表4]
 日本の自動車産業の課題とMBD活用

武重伸秀(マツダ (株))

 
 今の自動車産業は百年に一度と言われる大きな転換期を迎えており、これまでの自動車開発に加え、CASEなどの新たな価値を提供する取り組みが必須となっている。これは仕事量が大幅に増えることを意味しており、これまでの開発のやり方では開発工数が大幅に不足する。そのため、開発効率を劇的に向上させなければならない状況にあり、開発の進め方を抜本的に見直す必要に迫られている。
 その対応として注目を浴びているのがMBDであり、近年のコンピュータの発達を背景にCAEを駆使して開発効率を大幅に高めていく取り組みが行われている。しかし、今のCAEは3Dを中心とした精密な計算を実行しており、費用や期間の面で問題が多いのが実情である。
 また、地球環境対応のために燃費向上が必須だが、Well to Wheelでのエネルギー効率をどのように高めていくかの技術戦略がますます重要性を増している。
 今回、これらの課題にどのように対応すべきかを整理するとともに、品質工学としてどのように取り組んでいくべきかを考える。

パネル討論

テーマ「品質工学のITとの結合による進化と課題」

司会:山戸田武史( (株) IDAJ
パネリスト:各発表者 

 
 近年、IT技術の進展により大規模データを高速に処理したり、シミュレーションで仮想試作をしたりすることが容易になってきた。一方、ITには多大な投資を要するため、投資に見合った成果が期待されている。品質工学においてもITと関連した事例が増えており、IT化による成果を得る一つの手段として期待できる。
 本討論では、先ず、ITとの結合によって品質工学はどのような進化を目指すべきかについて、今後の進化のビジョンを共有することを目的として議論を行いたい。
 次に、品質工学の課題について考えると、MBDは設計の上流領域を対象とするため、従来のパラメータ設計では手法的に不足部分がある。また、機械学習が対象とするタスクはMTシステムの対象と重なる部分があり競合する。品質工学が今後大きく普及・発展するためには、これらの課題を解決する必要がある。その際は、機械学習の様に徹底してオープンな学術環境も参考にすべきである。本討論では、続いて、品質工学が解決すべき理論・手法的課題と環境的課題について、課題を共有することを目的として議論を行いたい。

これまでの開催履歴

大会についてのお問合せ

品質工学技術戦略研究発表大会に関するお問い合わせは, 品質工学会事務局までお願いします
  品質工学会事務局 金野(こんの) 

  ・ TEL (03) 6268-9355  ・FAX (03) 6268-9350