一般社団法人品質工学会 各種規程

【暫定】田口賞規程

原案作成 1999年7月24日
田口賞企画小委員会
規定の改廃責任 田口賞委員会

 
品質工学会は以下のように、田口玄一賞を設ける。

1. 賞の名称と目的

 品質工学会 田口玄一賞(略して田口賞) 品質工学〔機能性評価の汎用的方法〕の趣旨を理解し、その理念、考え方の上に立った技術戦略として の手法を活用し優れたハード/ソフトの製品を能率良く開発し、広く社会に貢献した組織体を表彰して、品質工学の普及の促進を図り、社会全体の生産性の向上に寄与する。

2. 賞の内容

 品質工学の方法を組織的に展開・応用し、著しい事業成果を上げるとともに品質工学の発展に寄与し た企業、または組織を対象とする。賞は年度賞とする。再選はこれを拒まない。

3. 受診資格と賞の種類

 賞を受賞しようとする組織体は、少なくとも3年以上組織体として継続して活動していることが必要で、 なおかつ品質工学会の会員が一人以上所属していることが必要である。
 一度、田口賞を受賞した組織体は、3年以上を経てから再度受賞することができる。本賞は、受賞申請した組織体が多数ある場合は、ある基準を満たした上で、その中から最も優れた成果を出したものに授与される。一組織のみ受賞希望した場合は、審査後、審査基準を満たしたときに授与される。組織体とは以下の分類に該当する。
 1)営利企業の場合 独立した経営を営む企業・組織体そのものか、または、独立して技術、商品を研究/開発している部門が該当する。 なお、部門とは、企業であれば、事業部、研究所、技術部、開発部、生産技術部 などが該当し、工場などもその単位とする。サービス事業など、例えば病院などでは、診断、治療方法の開発などを行っている部門が該当する。また、複数の組織体を含んでも良いが、少なくとも、品質工学が普及することにより成果が追求される組織体であることが必要である。
 2)非営利組織部門 非営利組織は、国家、県の研究所や、大学の研究所など直接商品、製品を開発していない公的機関またはそれに該当する組織体で、自組織のみならず、営利企業などへ品質工学を普及している 組織体である。なお組織体全体、または内部組織でひとつの管理体として独立し成果を追求される組織体であることが必要である。

4:賞の授与

 賞は8章に定める、田口賞審査委員会の厳密なる審査を行った上で、品質工学会として会長より授与される。賞の内容は、
 1)賞状
 2)記念品

5:賞の基本的考え

 品質工学会は、品質工学による機能性の具体的評価方法を年々進歩させている。その目指すところ は、品質工学の利用をもって、ダイナミックでしかも信頼できる技術、製品、工程を開発し、社会全体の生産性の向上をはかることにある。個々の課題に対して自由な技術的提案の合理的評価手段を提供することを直接の目的をしている。品質工学の内容を更に展開・体系化しより精緻にしてゆくことは、学会の本来の役割となる。しかしながら学会に公表され形式知化された品質工学の知識が、企業や公的機関の中で 展開・応用し成果を上げることは、品質工学の最終目的を達成することにもなる。
 様々な形式化された品質工学の知識資源を実際の場で応用をすることは、得られた知識の確実性を更に高めるのみでなく、応用時に様々な新しい課題の発見の機会をも与えてくれる。これは、応用の場か らの新しい課題の発見と、それらの課題を解決し理論/手法として体系化する学会との知識循環の場を形成することにもなり、品質工学の成果と品質工学の最終目的を達成する善循環プロセスと考えている。
 個々の論文については既に、学会の大会賞や論文賞を設けその優れた内容に対して表彰している。 しかしながら、品質工学会の最終目的からすると、それだけでは不充分と考える。本賞の基本的考え方は、 組織体での実践的展開に焦点をあて、その実践が組織体の成功を導いたことを激励することにある。 様々な企業や公的機関においての過去の経験が示すように、品質工学の実践的応用が、多くの成功を導いてきたのは戦略としてのマネジメントの関与があったからである。本賞の基本的コンセプトは、品質工 学の実践で事業の成功を導いたマネジメント面に焦点をおいてつくられている。本賞は審査の基準を与 えることになるが、それのみでなく本賞で利用する審査フレームにしたがってマネジメントを見なおし、良いところを更に発展させ、不足していることを補い改善すれば、品質工学の応用を通じて組織体の成果を上げることができることも提案している。本規定は次の7つの考え方を中心につくられている。
 
 1) 競争力のある強い企業の商品開発体制を作り上げる、開発組織体質の改革である。
 2) 商品開発の戦略を担うマネジメントとしてのリーダシップを重視する。
 3) 本審査基準を用いることにより、戦略としての品質工学の組織内展開のレベルが自己評価できる。自己革新が促進できるようになる。
 4) 部単位での導入・展開の効果をはかる。
 5) 日常の行っていることが評価できるのみでなく、更に新しい基礎技術のような高いレベルの品質工学の展開ができる方向づけを明確にすることができる。
 6) リーダ、推進者、実践者に対する技術開発に関する戦略を教育することで。人材の開発ができ、組織しての活性化ができる。
 7) 経営品質の向上や、ISO9000、QS9000などの品質向上活動とも整合性があり、同時並行的に進めることができる。
 
 審査のフレームは、成功への導きとその成果がトップマネジメントからも評価されることが重要である。 本賞の審査フレームは組織的手段の良否と成果の二つの要素から構成される。成果はそれぞれの組織的手段要素の成果と、総合して品質工学を適用した組織体の業績の成果である。品質工学的にいえば、 総合的戦略としてのマネジメントのレベルと個別プロジェクトに対する商品としての市場品質水準のアップと開発のスピードの向上である。 いくつかの成功経験から得られた審査の全体フレームは図1に示すようである。総合して7つのフレームから成り立つ。各フレーム枠をエレメントと呼ぶ。二つの結果のエレメントと五つのマネジメントエレメントから成り立つ。受賞を希望する組織体は、8章に示されている各エレメントに関して、その実践状態を審査委員会に提出する必要がある。 
 

本賞の審査基準では上記の各エレメントを用いるが、次のようなポイントに焦点をあてて審査する。
1)成果を評価する
 品質工学の考えや方法を適用し、市場でのトラブルの減少と開発期間の短縮の実績を上げている点を重要視する。
2)成果は次の領域でみる

 組織の長の開発戦略に対する理解と責任、応用展開の量、社員の能力の開発、応用の深さ、開発の生産性への寄与、応用の数量、商品開発/工程設計など応用したときの業績、そして品質工学会や品質工学に関連して社会への貢献である。
3)技術に重要をおく
 品質工学の最も重要な応用は、早期に可能な技術開発にあるので、コアになる技術領域に適用しているかについて審査する。
4)徹底さに重点をおく
 組織体の成果は、いくつかの技術領域で構成されていることが多いので、その応用展開の領域の広さとその深さにも着目する。
5)学習を評価
 組織として成果を出すには人材育成が大切であるので、学習の仕組みとその運用についてみる。
6)一貫性
 組織長の方針や目標に沿って開発・生産プロセスに統合していることが望ましいので、目標と展開の一貫性、統合性をみる。
7)継続性
 品質工学は日々進化しているので、スポット的な応用ではなく、継続的に実行することが重要なので、その点を評価する。
8)学会、社会への貢献
 適用の成果は、自組織だけでなく、その成果は、学会を含め広く社会へその方法の有用性を共有化 することが大切である。それはやがて自組織に還元されるので、その学会や社会貢献度を評価する。

6.受賞組織体の役割

 田口賞を受賞した組織体は、その実践内容を品質工学会大会にて発表し、品質工学の普及発展に 寄与する役割を担う。

7.審査プロセス

 品質工学会は、応募する組織体に対して、田口賞審査委員会を品質工学会の審査部会に下部機関として設け審査にあたる。応募組織体は、8章に示される審査エレメントの各項目に対して、その現状を記述した品質工学展開説明書を応募用紙と共に提出する。審査委員会は、品質工学展開説明書の内容より、その展開状況を審査し、総合得点がある基準を超えた場合、現地審査し、その審査をもとに最終決定する。複数の組織体が応募してきた場合は、その応募組織体の中から最も優れた組織体に賞を授与する。
 審査結果から更に応募組織体が品質工学の発展と事業の成果を高めるための審査レポートを受審組 織体に返送する。審査にあたっては、別途審査手順を確立するが、その実行は、審査会で制定し実施する。指針として次のようなものにする。

1)審査は、一次、二次審査をもって審議される。
2)一次審査は、書類審査であり、受賞依頼企業から提出された品質工学展開説明書をもとに審査される。
3)その審査結果をもとに、田口賞選定最終委員会で選定される。 審査の過程で得られた、組織体の強み、改善のポイントは報告書としてフィードバックされる。
  
 1)応募締め切り  月 日
 2)一次審査    月 日
 3)現地審査    月 日
 4)最終審査    月 日
 5)発 表     品質工学会発表大会2ヶ月前。
 6)審査レポートのフィードバック  月 日
 

7.1 審査にかかわる費用の負担

 審査組織体は、審査にかかわる経費の実費負担を負うものとする。
 1)一次審査費用
 2)二次審査費用
 3)フィードバックレポート費用

8:審査基準

 賞の審査基準は、以下に定める基準を用いて各エレメントを評価するとともに、最終的には総合した成 果として評価される。エレメント1から5については展開の方法を、エレメント6、7は成果の表を参照とする。エレメントの審査ガイドを表1、2に示す。
 

8.1 審査フレーム

以上の判断を踏まえて、現在考えられる要素を手段系と結果系に分けて候補を選定してみる。
1)商品開発担当トップのリーダシップ
 1.1) 品質工学の展開についてリーダとしての認識、技術部門への普及の明確化
 1.2) 方針の組織内へのコミュニケーションと展開の具体性
 1.3) 競合品とのベンチマーキングの仕組み
2)技術フォーカス
 2.1) 研究/技術/開発/サービスプロセスの明確化とその手段に対する戦略
 2.2) 対象領域におけるシステムの分解と評価のプロセス
 2.3) 実施に対するマネジメントの方法
3)実践プロセスのマネジメント
 3.1)品質工学による機能性評価プロセスの明確化
 3.2)研究/技術開発/製品開発/サービスプロセスへの品質工学による機能性評価の実施と実施例
 3.3)機能性評価プロセスの改善
4)人材の育成と開発
 4.1)人材開発のプロセス明確化
 4.2)組織構成員の教育・訓練・能力開発
 4.3)人材育成の評価と動機づけの方法
5)支援環境の整備
 5.1)活動しやすい支援環境の整備
 5.2)上下左右の協力関係の仕組み
 5.3)実践事例の共有化の仕組み
6)品質工学の適用の成果
 6.1)人材開発の成果
 6.2)品質工学適用の成果
 6.3)無形効果
7)事業の成果と社会への貢献
 7.1)経済的効果
 7.2)品質工学社外普及への貢献
 7.3)関連会社への展開の成果
 

8.2 各エレメントの配点

 各エレメントの配点に関しては、年度その展開レベルと重点のおき方により修正するものとする。事前にその年度の配点を会員に公表するものとする。評価は、各エレメントの得点を各エレメントに配分されるウエ イトにより各エレメントの評点し、総合することにより審査総合点となる。
 

8.3 評価ガイドライン

 各エレメントを評価する得点を表1と表2に示す。
 
  表1 エレメント1から5: 取り組みと普及の度合いの尺度

得点 取り組み状態 普及の度合い
0 ●逸話的である。
●推測的展開であり体系的な記述がなされていない。
●逸話的であり、すべての領域で信頼に乏しい。
1~3 ●部分的に実践がはじまった段階。
●組織的なる取り組みを開始した段階。
●思考的理解の程度である。
●一部トライアウト的活動がはじまっている。
4~6 ●中心となる問題・課題に対して明確なる取り組みがなされているが、その維持管理に焦点がおかれている。 ●全体としては展開しはじめているが、継続性、一貫性がみられない。
●一部普及していないところが散見される。
7~9 ●その取り組みは、組織体の上位目標に整合していて、成果に向けて取り組んでいる。
●その実践状態が把握され、事実に基づき分析され、改善の成果が明確に記述されている。
●取り組のシステムが関連組織体との関連で整合するよう一貫性を継続的に取り組んでいる。
●しっかりした体系に基づき組織体全体で実践している。
●関連組織体に対しても、必要に応じて普及をはかっている。
10 ●審査基準に対して、しっかりした 体系的に取り組んでいる。またそのレベルがベンチマークよりも優れている。
●マネジメントの主要ツールとなり事実に基づいた展開をしている。
●すべての領域で実践をして,重大な欠陥もなく展開している。
●関連する組織体との取り組みも盛んで重大な弱点もなく展開している。

 
表2 エレメント6,7:成果を審査する尺度
得点 成果
0 ●実績が示されていない。
●推測的な実績が示されている。
1~3 ●初期の立ち上げ段階での成果が示されている
●一部のところで実践が示されている。
●主要審査要件にこらえる成果が示されていない。
4~6 ●主要要件のかなりの領域で成果が示され,改善傾向にある。
●一部の重要領域で大きな成果が出されている。
●いくつかの要素の成果が継続してとられ,良好な傾向を示している。
7~9 ●主要業務に対して良好な成果かがでている。一部業界でもベンチマークされる状態である。
●主要要件について成果が示され、改善傾向にあり、ほとんどの領域で成果が持続されている。
10 ●主要要件の多くでその成果は卓越している。
●ほとんどの要件で改善傾向が継続していて、その傾向が高いレベルで継続している。
●多くの分野で、業界をリードしている実績がある。